2025年10月27日
microCMS活用術:コンテンツ運用を最適化するデータ設計(スキーマ設計)入門

I. 導入:なぜデータ設計(スキーマ設計)が重要なのか?
ヘッドレスCMSは、その高い柔軟性とAPIによる自由なデータ利用で、現代のウェブサイト構築において欠かせないツールとなっています。しかし、「自由に使える」がゆえに、コンテンツの設計段階で「適当に作り始めてしまうと、後々大きな問題に発展する」という落とし穴が存在します。
- 「コンテンツを更新するたびに開発会社に依頼しないといけない」
- 「コンテンツ管理画面が複雑すぎて使いこなせない」
- 「将来、機能を追加したいのに、今のコンテンツ構造では対応できない」
このような問題は、ヘッドレスCMS導入前の「データ設計(スキーマ設計)」が不十分であるために起こりがちです。
データ設計とは、Webサイトに存在するあらゆるコンテンツの「型」を決める作業であり、Webサイトの骨格となる極めて重要な工程です。microCMSでは、コンテンツの種類を「サービス」、そのコンテンツが持つ項目を「フィールド」として定義します。この設計が適切に行われているかどうかで、コンテンツ運用効率、将来的な拡張性、そして開発効率が大きく左右されるのです。
本記事では、microCMSを最大限に活用し、長期的なコンテンツ運用を効率化するためのデータ設計の基本と実践ノウハウを、ステップバイステップで解説します。
II. データ設計の基本原則:長期運用を見据えて
microCMSの特性を理解し、長期運用に耐えうるデータ設計を行うための基本的な考え方を身につけましょう。
- 「コンテンツの最小単位」で考える コンテンツは、可能な限り細かく分解し、再利用可能な「パーツ」として定義することが重要です。例えば、ブログ記事全体を一つの大きな塊と捉えるのではなく、「タイトル」「本文」「メイン画像」「カテゴリ」「タグ」など、それぞれの情報を独立したフィールドとして設計します。これにより、各パーツを様々な場所で再利用したり、柔軟なコンテンツ表示を実現したりできます。
- 「表示場所」ではなく「コンテンツそのもの」を定義する ヘッドレスCMSの最大の特長は、コンテンツと表示(フロントエンド)が分離されている点にあります。データ設計を行う際は、特定のWebサイトやアプリでの「表示場所」に縛られず、純粋な「コンテンツそのもの」が持つべきデータ構造として設計することを意識しましょう。これにより、将来的に新たなチャネル(スマートフォンアプリ、デジタルサイネージなど)でコンテンツを利用する際も、既存のデータ構造を大きく変更する必要がなくなります。
- 「将来の拡張性」を意識する Webサイトは一度作ったら終わりではありません。今後追加されるであろうコンテンツの種類や機能(例:多言語対応、関連コンテンツ表示、動画コンテンツの追加)を見越して、柔軟に変更・追加が可能な設計にしておくことが重要です。完璧を目指す必要はありませんが、「こうなったら困る」という最悪のケースを少しでも回避できる設計を心がけましょう。
- 「運用者の視点」を取り入れる データ設計は開発者だけでなく、実際にコンテンツを更新するWeb担当者や編集者の方の視点を取り入れることで、使いやすいCMSが実現します。不要なフィールドを増やさず、直感的で分かりやすい命名規則を統一するなど、コンテンツ運用者が迷わずに使えるシンプルな設計を心がけましょう。
III. microCMSでの具体的なスキーマ設計ステップ
それでは、microCMSの管理画面をイメージしながら、具体的な設計手順を見ていきましょう。
- ステップ1:必要な「サービス(=コンテンツの種類)」を洗い出す まず、貴社のWebサイトに存在する主要なコンテンツの種類を洗い出します。これらがmicroCMSにおける「サービス」の単位となります。
- 例: ブログ記事 (
blog_post)、お知らせ (news)、会社概要 (company_info)、FAQ (faq)、スタッフ情報 (staff_info) など。
- 例: ブログ記事 (
- ステップ2:各サービスに必要な「フィールド」を定義する 次に、洗い出した各サービスにどのような情報が必要か詳細に定義し、適切なフィールドタイプ(テキスト、画像、リッチエディタ、選択肢など)を選択します。
- 必須フィールドと任意フィールドを明確に区別することも重要です。
- 例:
blog_postサービスの場合title(テキスト、必須): 記事のタイトルslug(テキスト、ユニーク、必須): URLの一部となる識別子main_image(画像、任意): 記事のメイン画像body(リッチエディタ、必須): 記事本文category(セレクトボックス、複数選択可): 記事のカテゴリtags(テキストリスト): 記事に関連するタグauthor(コンテンツ参照): 著者情報
- ステップ3:コンテンツ参照(リレーション)の活用 異なるサービス間に関連性がある場合、「コンテンツ参照」機能を使ってリレーションシップを構築します。これにより、データの重複入力を避け、一貫性を保ちながらコンテンツを管理できます。
- 例:
blog_postサービスのauthorフィールドを、staff_infoサービスへの参照として設定することで、著者情報を一元管理し、複数の記事で同じ著者情報を簡単に利用できます。
- 例:
- ステップ4:カスタムフィールドと繰り返しフィールドの活用 より複雑なコンテンツ構造を表現したい場合は、「カスタムフィールド」と「繰り返しフィールド」が非常に強力です。
- カスタムフィールド: 複数のフィールドをグループ化し、特定のセクションを作成できます。例えば、FAQの「質問」と「回答」をセットで管理する場合などに有効です。
- 繰り返しフィールド: 複数の要素を繰り返して入力したい場合(例:ギャラリーの画像リスト、Q&A形式の項目)に利用します。
- ステップ5:APIスキーマ(取得URL、フィルター、ソートなど)の確認とSDKの活用 設計したスキーマが、フロントエンドでどのようにAPIから取得できるかをイメージし、必要に応じて調整します。特に開発者の方にとっては、microCMSが提供する公式SDKの利用を強く推奨します。
- microCMS SDKの利用推奨:
- 型安全性の向上: TypeScriptと組み合わせることで、APIからのレスポンスデータを型定義し、開発時のエラーを削減します。
- コードの簡潔化: APIリクエストの記述を簡略化し、開発効率を大幅に高めます。
- 公式サポートの安心感: microCMSが公式に提供するライブラリであるため、安心して利用でき、最新の機能にも対応しやすいというメリットがあります。
- また、APIの取得オプション(フィルター、ソート、検索など)が効果的に使える設計になっているかを確認し、フロントエンドでの柔軟なコンテンツ表示に備えましょう。
IV. よくある失敗例と解決策
スキーマ設計の際に陥りやすい失敗例と、その解決策を知っておくことで、効率的な設計に繋がります。
- 失敗例1:何でもかんでもリッチエディタに入れてしまう
- 問題点: 構造化されていないため、後から特定の情報を抜き出したり、異なる表示形式で使ったりすることが難しくなります。
- 解決策: 見出し、画像、リスト、引用など、構造化できる要素はそれぞれ独立したフィールドとして用意し、リッチエディタは純粋なテキスト本文に限定しましょう。
- 失敗例2:特定の表示形式に特化した設計にしてしまう
- 問題点: 将来デザインが変わった際に、コンテンツ構造まで変える必要が出てきてしまいます。
- 解決策: フロントエンドの表示ロジックはコード側で吸収し、コンテンツデータは「純粋な情報」として設計する、「表示場所ではなくコンテンツそのもの」という原則を再確認しましょう。
- 失敗例3:命名規則がバラバラで管理しにくい
- 問題点: フィールド名が統一されていないと、開発者も運用者も混乱し、誤操作の原因となります。
- 解決策: フィールド名、サービス名に統一された命名規則(例:スネークケース、キャメルケース)を設け、ドキュメント化しておきましょう。
- 失敗例4:修正や拡張のたびに既存コンテンツを壊してしまう
- 問題点: 安易なフィールドの削除や型変更は、既存のコンテンツデータに影響を与え、表示崩れやデータ消失を引き起こす可能性があります。
- 解決策: フィールドの削除は慎重に行い、新規追加は既存コンテンツへの影響を考慮して行いましょう。microCMSの変更履歴機能も確認し、必要に応じてバックアップも考慮に入れると良いでしょう。
V. まとめと次のステップ
microCMSを導入する際のデータ設計(スキーマ設計)は、まさに「未来のコンテンツ運用への投資」です。適切なスキーマ設計を行うことで、コンテンツの品質が向上し、日々の運用が効率化され、将来的な機能拡張にも柔軟に対応できる強固な基盤を築くことができます。これは、microCMSの機能を最大限に引き出すための鍵となります。
ブラキオでは、microCMSの導入支援から、貴社のコンテンツ特性に合わせた最適なデータ設計、microCMS SDKを活用したフロントエンドとの連携構築まで、トータルでサポートいたします。
「コンテンツ運用で悩む前に、ブラキオにご相談ください。」
microCMSを活用したサイト制作・リニューアルをご検討でしたら、ぜひ一度お問い合わせください。貴社のビジネス成長に貢献する最適なコンテンツ運用体制を共に作り上げましょう。
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